施設の健康診断では、入居者の尿を採取し、検査に提出する必要があります。歩いてトイレに行ける方なら、紙コップを渡して採尿してもらえばよい。そう考えるのが自然かもしれません。
ところが現場では、そう簡単にはいかないことがあります。歩行はできて、自分で、あるいは介助を受けながらトイレにも行ける。それでも、「このコップに尿を採ってください」という説明を理解し、行動に移すことが難しい方がいます。普段リハビリパンツを使用している方では、尿意を感じてトイレへ向かう途中や、便器に座る前に排尿が始まっていることもあります。スタッフが紙コップを渡した時点では、採れる尿が残っていないのです。
寝たきりの方や、おむつを常時使用している方の採尿が難しいことは、比較的イメージしやすいかもしれません。今回のヒアリングで見えてきたのは、歩ける方の採尿にも、別の難しさがあるということでした。
使用後のヒアリングで聞いた、実際のケース
2026年7月、ある特別養護老人ホームで、採尿サポートパッド「ゆらりす®」の現場使用テストを実施しました。介護スタッフが担当する入居者に、これまで行っていた方法とゆらりす®の両方を使っていただく形です。8月には、実際に使用したスタッフへ個別に話を聞きました。
以下は、そのうち1名(Aさん)とのやりとりです。発言の趣旨を変えない範囲で、話し言葉を読みやすく整えています。
Aさん(介護スタッフ)「私が担当している方の中におむつの方がいなかったので、歩行可能でリハビリパンツを使用しているBさんに実施させていただきました」
瀬川「リハビリパンツの方に使っていただけるというイメージは持っていなかったので、詳しく教えていただけますか」
Bさん(入居者)の場合、それまで施設で行っていた方法ではうまく採尿できていませんでした。リハビリパンツの中にラップを敷き、その上にドライタオルを当てて排尿を待つ方法です。
Aさん「ラップを敷いて、ドライタオルを当てていたんですが、ずれたらそれまでで」
瀬川「ドライタオルがずれると、尿がリハビリパンツの方に流れてしまうということですね。リハビリパンツを開いた時には、もう採れないと」
Aさん「そうです」
瀬川「Bさんは歩行可能ということですが、紙コップではなくドライタオルを使っていたのは、どういった理由からですか?」
紙コップでの採尿について尋ねると、はっきりした答えが返ってきました。
Aさん「コップでBさんの採尿をするのは難しいんです。トイレに着いた時にはもうリハビリパンツ内に尿が出てしまっているので。だからコップは使わないですね、私は」
瀬川「なるほど、そういう理由なんですね。それでドライタオルを使っていたということですね。では、ゆらりすを使ってみて何か違いはありましたか?」
Aさん「その時もトイレに着いた時にはすでにリハパン内に尿が出ていたのですが、ゆらりすがずれず、尿が逃げることもなかったので、無事に採尿ができました」
ゆらりす®を使って、何が変わったのか
今回見えてきた違いは、単に「楽になった」ということだけではありません。本人に求める行動そのものが変わることです。
紙コップを使った採尿では、本人が「紙コップを受け取り、そこに排尿する」という指示を理解し、実行できることが必要です。トイレに向かう途中ですでに排尿が始まってしまえば、紙コップで採ること自体が難しくなります。
ゆらりす®は、リハビリパンツやおむつの内側にあらかじめ貼り付け、排尿を待つ製品です。装着はスタッフが行うため、本人に「紙コップに排尿する」といった指示をする必要がありません。
今回のケースでは、それまでの方法では採尿できなかったBさんから、ゆらりす®で尿を回収することができました。

現場で使っていただいて、初めて見えた使い方
私たちがゆらりす®の対象として主に想定していたのは、おむつを常時使用している方であり、リハビリパンツを使用し歩行している方は主な対象として想定していませんでした。今回は施設側の判断でBさんに使っていただき、後から話を聞くことで、初めてこの使い方に気づきました。
今回改めて感じたのは、想定した用途を先に決め切るのではなく、まず現場で小さく試していただき、その後に使い方や理由を聞くことの大切さです。そうすることで、私たちだけでは気づかなかった対象や使い方が見えてきます。今回はまさに、現場と一緒に製品の可能性を見つけていく中で生まれた発見でした。
今回のヒアリングを通じて、私たち自身も「歩いてトイレに行ける方であれば、紙コップで採尿できる」という前提をどこかに持っていたことに気づきました。実際に現場で使っていただき、その声を聞くからこそ、製品側だけでは見えない困りごとや使い方が見えてきます。これからも「現場から始める」ことを大切に、製品そのものだけでなく、使い方や運用も含めて現場と一緒に育てていきたいと考えています。
まとめ
採尿の難しさは、歩けるかどうかだけでは決まりません。指示をどこまで理解できるか、尿意から排尿までのタイミング、普段使用している採尿用品など、複数の要素が重なることで、歩いてトイレに行ける方でも採尿が難しくなることがあります。
今回の現場使用テストとヒアリングでは、こうした方から、リハビリパンツの内側に装着したゆらりす®で尿を回収できた例が確認できました。1施設・1例での経験ではありますが、これまで私たちが「採尿が難しい方」として十分に想定していなかった方にも、ゆらりす®が選択肢になりうる可能性が見えてきました。
もし同じような場面に心当たりのある方がいれば、ぜひお話をお聞かせください。現場の声が、次の使い方や改善につながります。


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