医療的ケアが必要なお子様との毎日は、深い愛情に満ちている一方で、絶え間ない心配や緊張と隣り合わせでもあることと思います。日々のケアに追われる中で、お子様の「いつもと違う」にいち早く気づきたい、でもどうすれば…と悩まれることも少なくないでしょう。
お子様の体から毎日排出される「おしっこ」。それは、単なる排泄物ではありません。実は、体の内部の状態を教えてくれる、とても大切な「お便り」なのです。このお便りを読み解くためのツールが、ご家庭で手軽に使える「尿検査試験紙」です。
この記事では、医療的ケア児のご家庭での尿検査について、試験紙の選び方から基礎知識まで、分かりやすく解説します。尿検査のやり方を身につけることで、お子様の健康状態をより的確に把握できるようになります。
家庭での尿検査とは?基礎知識を解説
家庭で行う尿検査は、尿検査試験紙という検査キットを使用します。この試験紙を尿に浸すだけで、数十秒から数分で結果が色の変化として現れ、尿蛋白、尿潜血、尿糖の3つの成分を簡単にスクリーニングすることができます。

ただし、医療機関での検査と比較して検査項目が限定されており、偽陽性や偽陰性の可能性があるため、異常が疑われる場合は必ずかかりつけ医にご相談ください。
なぜ家庭での尿検査が重要なのか
医療的ケア児においては、基礎疾患や医療的ケアの実施により、健常児と比較して尿路感染症や腎機能障害のリスクが高いことが知られています。
家庭での定期的な尿検査によるスクリーニングには、以下の意義があります。

- 早期発見:症状を自覚・表現できない重症児においても、腎・尿路系合併症の早期発見が可能
- 定期モニタリング:基礎疾患の進行や薬物療法による腎機能への影響を継続的に監視
- 医療連携:家庭でのスクリーニング結果をかかりつけ医と共有し、適切な受診タイミングを判断
- 保護者の安心:客観的なデータによる健康状態の把握で、ご家族の心理的負担を軽減
尿検査試験紙の選び方|医療的ケア児に適したキット
薬局やドラッグストア、オンラインストアには、様々な種類の尿検査キットが並んでいます。医療的ケア児に適した試験紙の選択ポイントをご紹介します。
市販の尿検査キットの比較
タイプ | 製品例 | 検査項目 | 価格目安 | 特徴・おすすめ用途 |
---|---|---|---|---|
1項目タイプ | 新ウリエースGa(テルモ) | 糖のみ | 1,109円 (30枚入り) | 血糖値管理を重点的に行いたい場合 |
1項目タイプ | マイウリエースT(テルモ) | 蛋白質のみ | 1,170円 (30枚入り) | 腎機能を重点的にチェックしたい場合 |
2項目タイプ | 新ウリエースBT(テルモ) | 糖、蛋白質 | 1,047円 (10枚入り) | 初めて試す方や基本的な健康チェックに便利 |
3項目タイプ | ウリエースKc(テルモ) | 糖、蛋白質、潜血 | 1,232円 (10枚入り) | より詳しい健康チェックを行いたい場合 |
※価格は参考価格です。購入時期や販売店により変動する可能性があります。
おすすめの選び方
目的に合わせて、以下の項目をチェックできる試験紙がおすすめです。
- 尿タンパク:腎臓の状態をチェック
- 尿糖:血糖値の異常をチェック
- 尿潜血:泌尿器系の問題をチェック
医療的ケア児の中でも、特に以下のような高リスクの条件を持つお子さまでは、家庭での基本的なスクリーニング(尿蛋白、尿潜血、尿糖)に加えて、定期的に医療機関での詳しい尿検査を受けることをお勧めします。
- 膀胱留置カテーテルを使用している
- 先天性腎尿路異常(水腎症、膀胱尿管逆流など)の既往がある
- 過去に尿路感染症にかかったことがある
- 神経因性膀胱や便秘症を合併している
このような場合、医療機関では白血球エステラーゼや亜硝酸塩などの検査も含めた7項目の詳しい尿検査が可能で、尿路感染症の早期発見により有効です。家庭でのスクリーニングで異常を認めた場合や、発熱・尿の濁り・においの変化などの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
医療的ケア児の尿検査|検査前に知っておきたいこと
検査のタイミングと頻度の目安
お子さまのリスクレベルに応じて、以下を目安に検査を実施することをお勧めします。基本的には朝一番の尿が最も濃縮されており、異常を発見しやすいとされています。
高リスク群(カテーテル使用、先天性腎尿路異常など)
- 月1回程度の定期スクリーニング
- 発熱や症状出現時は速やかに実施
中リスク群(便秘症、経管栄養実施など)
- 症状出現時および定期健診時
- 体調変化が気になる時
注意事項
- ビタミンC摂取: 経管栄養剤や液体の栄養補助食品、風邪薬などに含まれるビタミンCが、尿検査結果に影響を与える可能性があります。特に医療的ケア児では、普段から経管栄養でビタミンCを摂取していることが多いため、検査結果については必ずかかりつけ医にご相談ください。
- 薬剤の影響: 抗菌薬、利尿薬、ステロイドなど、医療的ケア児が服用することの多い薬剤が検査結果に影響を与える可能性があります。
- 保存方法: 直射日光を避け、乾燥した場所で保管
まとめ|家庭での尿検査で健康管理をサポート
医療的ケア児の家庭での尿検査は、お子様の健康管理において心強い味方となります。適切な尿検査キットを選び、正しい尿検査のやり方を身につけることで、小児の健康状態の変化により早く気づくことができるようになります。
次回の記事では、実際の採尿方法や尿検査の具体的な手順について詳しく解説します。
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参考文献
学会ガイドライン・公的機関
- 日本腎臓学会:「一般臨床医のための検尿の考え方・進め方」(2023年)
https://jsn.or.jp/guideline/kennyou/09.php
最終確認日:2025年7月6日 - 厚生労働省:「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査報告書」(2020年)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/index_00004.html
最終確認日:2025年7月6日
専門機関・医療機関
- 日本小児泌尿器科学会:「小児の尿路感染」診療指針
https://jspu.jp/ippan_014.html
最終確認日:2025年7月6日
検査機関・技術資料
- シー・アール・シー:「尿定性検査で偽陰性、偽陽性となる要因について」
https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/57.html
最終確認日:2025年7月6日
この記事について
※本記事は医師であるゆらりす代表の監修のもと、医学的根拠に基づいて作成されています
※家庭での尿検査はスクリーニング検査であり、診断や治療に代わるものではありません
※検査結果に異常が認められた場合や、お子さまの体調に変化がある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください
※実際の検査や治療については、医師の指導に従ってください
監修: 河村峻太郎(医師、医学研究者、ゆらりす代表)
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